救世主村 第二部 3 昼間からビール
平日の昼間からビールを飲む人間はどんなヤツだろうと思っていたこともあるが、今は自分がそんなヤツだ。一億円あればこんな生活を何年送れるんだろう。今は平日だって映画も見れるし、遊園地にだって行ける。いい歳をした大人が一人でジェットコースターに乗るというのもなかなか奇妙な光景でいいんじゃないか?
廊下をドタバタとかけまわっているガキがいる。
「しずかにしろこのやろう! 」
子供のくせに何で平日にこんなところにいるんだ? その問をそっくり自分に返されたら困るけれど。近畿日本ツーリストの「列車でめぐる日本縦断の旅! 七日間」というチラシを読む。羽田から鹿児島まで飛行機で行き、日本を列車で北上し、新千歳空港から飛行機で羽田まで戻る。四月出発二十万九千八百円が安いのか高いのかよくわからない。でも、旅をする金持ちのホームレス、というのもいいんじゃないか?
テレビで富士サファリパークのコマーシャルをやっている。「ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンだー」和田アキ子が歌っていたと思っていたが、違うんだってね。
そうだ、一度も行ったことがない富士サファリパークへ行ってみようか。ライオンに会いたいな。ここからどう行けば行けるのだろう。タクシーだと何万円もかかるのだろうか? いくら一億円持っていても、そんな長距離をタクシーで行く気にはならないな。
八景島シーパラダイスでもいいし、富士急ハイランドでもいい。とにかく、そういうところに一度も行ったことがない…行ったことがないって、自分は誰なのかも思い出せないのに何でそんなことが言えるんだろう。
生ビールをもう一杯注文する。一億円あって、こうやってブラブラ生活できるんなら、自分が誰だって構わないような気がするな。ねえ、そう思わない? 酔っ払ってなんていませんよ。一億円? 嘘じゃないって、本当に持ってんの。そんなこと言わない方がいいですよだって? おせっかいだなあ。一億円をどこに置いてあるかって? それはねえ、ヘヘ、教えない。教えるもんですか。何だか眠くなっちゃったな。
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